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時系列データ分析とは?変動要因や分析手順をわかりやすく解説

記事の監修

代表取締役村越 聖人

2006年からエンジニアよりデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。

2006年からエンジニアよりデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。

時系列データとは、気温や株価など時間の経過と共に変化するデータを指し、近年多くの企業が注目するデータの種類のひとつです。
時系列データ分析を取り入れて商品管理やビジネス戦略の策定に役立て、大きな成果を上げている企業も増えています。

その一方で、難易度が高いと感じてしまい、導入検討の段階で止まってしまっている企業も少なくはありません。

そこで今回は、時系列データ分析に興味がある方に向けて、時系列データ分析の概要や特徴、時系列データの変動要因、主要な分析モデル、時系列データの分析手順、具体的な活用例などについて解説します。

この記事はこんな人におすすめ
  • 時系列データ分析の導入を検討している経営者の方
  • 時系列データの活用方法を探している事業担当者の方
  • データ分析分野で働きたいと考えている方

時系列データ分析とは:時間で変化するデータ解析

時系列データ分析とは、時間の経過と共に変化するデータ(時系列データ)を解析して、パターンやトレンドを抽出するための分析手法です。 時系列データの例として、気温や株価、人口、月々の商品売上数などがあります。時系列データ分析は、企業のビジネス戦略や研究開発などで重視されており、さまざまな分野での応用が期待されています。

事業の状態をリアルタイムで把握できる

企業の売上や業績の動きを時系列データで分析することで、ビジネスの健全性や成長をリアルタイムで把握できます。
時系列データ分析により、経営上の課題やビジネスチャンスを素早く見極め、ビジネスの将来性の予測などに役立てることが可能です。
このような理由から、時系列データはビジネス分野で高い注目を集めています。

顧客の嗜好や行動パターンの理解につながる

時系列データ分析を用いることで、顧客の嗜好や行動パターンを深く理解できます。顧客の購買履歴やサービスの利用履歴、Webサイトのアクセス履歴などを時系列で分析することにより、顧客の行動パターンが明らかになります。 顧客の嗜好や行動パターンが理解できれば、ターゲットを絞ったマーケティング戦略やサービスの改善に活用でき、ビジネスの成長に役立ちます。

時系列データの5つの変動要因

時系列分析におけるデータは、5つの主要な変動要因によって形成されます。

ここからそれぞれの変動要因について詳しく説明します。

長期変動:長期間の持続的な変動

長期変動とは、データが時間の流れに沿って長期間にわたって持続的に、上昇または下降を示す傾向の変動を指します。
細かな変化よりも、人口増加やGDPの成長のような大きな変動を捉えるために使用されます。長期変動の要因としては、経済の成長やテクノロジーの進展が挙げられ、これらはトレンドの形成に大きく寄与します。

循環変動:一定の周期で出現する変動

循環変動は、一定の周期で出現する変動や、景気のような周期的な要因によって引き起こされる変動を指します。
これは、長期変動が単なる上昇または下降の傾向を示すのに対し、上昇と下降をセットで含むサイクルとしての変化を示します。
循環変動は特定の周期を持ち、例えば経済サイクルのように3年から10年の間隔で繰り返される変化を捉えます。

季節変動:季節ごとに繰り返される変動

季節変動とは、年間や四半期などの特定の期間に繰り返されるパターンの変動を指します。
季節変動は、季節の変化や行事などに影響されることがあります。 例えば、旅行者数が季節により変動し、年末年始やゴールデンウィーク、夏季休暇など特定の時期に増加する傾向があります。 このような、年間を通じての周期的な変動パターンを捉えることが、季節変動の主な特徴です。季節変動を分析することで、特定の時期に発生する変化を予測しやすくなります。

周期変動:季節変動より長い期間で繰り返される変動

周期変動は、データが定期的な間隔で類似の変化を繰り返す変動を指します。
周期変動は季節変動よりも長い時間スパンで発生します。 具体的な例としては、景気の循環における経済の好況期と不況期の反復があります。このような周期変動は、時系列データ分析において周期性の傾向を把握する上で重要です。

不規則変動:予測できない突発的な変動

不規則変動は、長期変動や周期変動では説明しきれない、予測できない突発的な変動を指します。
不規則変動の具体例としては、会社の不祥事やストライキに伴う株価の急落、地震や台風などの自然災害などが含まれます。
この種の変動は突発的であり、時系列データ分析において予想外な要素を持ちます。

時系列データの分析モデル

時系列データ分析で使用されるモデルは、主に5つの分析モデルに分けられます。

ここからそれぞれの分析モデルについて詳しく説明します。

ARモデル:過去の値のみから推測

ARモデル(別名:自己回帰モデル)とは、過去のデータを値のみから将来の値を推測する分析モデルです。
この分析モデルでは、自己相関を用いてデータの特徴をモデリングします。例えば、過去半年分の売上データを用いて、今月の売上を予測することが可能です。 ARモデルの主な特徴は、過去のデータの動きを活用して、未来のデータを予測する能力にあります。モデルの精度を高めるためには、どの期間のデータを用いるか、またどの程度のタイムラグを考慮するかが重要な要素になります。

MAモデル:過去の値の平均値と過去の誤差から推測

MAモデル(別名:移動平均モデル)とは、過去の値の平均値と過去の誤差から推測する分析モデルです。
この分析モデルでは、過去の平均値とランダムな誤差(ホワイトノイズ)の影響を分析します。具体例としては、昨日までの売上平均と過去の誤差を用いて今日の売上を予測することです。 MAモデルは短期的なデータの変動やノイズを捉えるのに優れており、経済や金融など一時的な変動が多い分野でよく使われます。

ARMAモデル:ARとMAの組み合わせ

ARMAモデル(別名:自己回帰移動平均モデル)とは、ARモデルとMAモデルを組み合わせた時系列データの分析モデルのひとつです。
ARモデルがデータの自己相関を扱うのに対し、MAモデルはデータのノイズや短期的な影響を分析します。ARMAモデルでは、これら二つを融合させて、時系列データの複雑な動きをより正確に把握します。 実際のデータは、トレンドや季節性だけでなく、突発的な出来事や短期的な変動も含むため、ARMAモデルはこれらを総合的に分析するのに適しています。ARMAモデルは、経済や金融分野での予測に適しており、広く利用されています。

ARIMAモデル:長期変動の考慮

ARIMAモデル(別名:自己回帰和分移動平均モデル)とは、ARMAモデルから長期変動を考慮した分析モデルです。
自己相関(AR)、差分(Differencing)、移動平均(MA)の3つの要素で構成されています。 時系列データの平均値が時間と共に変動することを前提とし、その差分を取り入れることで、トレンドや季節性を考慮できるため、予測や異常の検知などが可能です。 ARIMAモデルは予測の精度と柔軟性の高さから、金融市場の分析、気象予報、在庫管理などで活用されています。

SARIMAモデル:季節性の考慮

SARIMAモデル(別名:季節変動自己回帰和分移動平均モデル)とは、ARIMAモデルを季節性に対応できるように改良した分析手法です。
ARIMAモデルのトレンドやノイズ分析の機能に加え、SARIMAは季節性がある時系列データも併せて考慮します。 SARIMAモデルは、商品需要の予測、在庫管理、広告戦略の策定など、ビジネスにおける多様な用途に活用されています。

時系列データ分析の手順

時系列データ分析を行う方法としては、まずは対象となるデータを収集します。その後、データの品質を向上させるための手法として前処理作業を実施します。 次に、データのトレンドを分析し、必要に応じてデータ変換を行います。続いて、データの周期性を分析し、重要な特徴を抽出します。最後に、情報を基にモデリングを行います。

1.データの収集

時系列データ分析の最初のステップは、適切な期間にわたる信頼性の高いデータの収集です。この過程では、分析の目的に沿ったデータを選び出すことが欠かせません。 また、折れ線グラフやヒストグラム、散布図などの可視化手法を用いて、データの概要を把握しておくと効果的です。 信頼性の高いデータを集めることで、分析の精度を高めることができるでしょう。

2.データの前処理

時系列データ分析において、データ収集後の次の重要なステップは、データの品質を向上させる前処理です。 このステップでは、欠損値や異常値の処理、異なるスケールのデータの統一、タイムゾーンの調整、さらにデータ間隔のリサンプリングなどが含まれます。 これらの前処理を通じて、分析の信頼性と精度をさらに高めることが可能になります。

3.トレンドの分析

データの前処理が完了した後に、はトレンドの分析を行います。時系列データは短期間で細かな変動を見せるため、全体の大枠の傾向を捉えるのが難しいことがあります。 この問題を解決するために、近隣のデータ点の平均を計算してデータを平滑化する技法を用います。このプロセスを移動平均と呼びます。 移動平均には、単純移動平均や指数平滑移動平均などの異なる手法があり、それぞれの時系列データに応じて適切な方法を選択します。

4.データの変換

トレンドの分析が終わった後は、データの変換作業に取り掛かります。時系列データには、非定常性や非線形性といった問題を抱えることがあります。 これらの問題に対処するために、データを対数系列や対数差分系列に変換作業を行います。対数系列は変動が大きいデータをより扱いやすくするために用いられます。 例えば、仮想通貨の価格のように急激な動きを示すデータに適しています。一方、対数差分系列はデータの水準よりも変化率や成長率に注目したい場合に活用されます。

5.データの周期性の分析と特徴の抽出

時系列データ分析では、データに季節性や周期性が含まれることがよくあります。これらの周期性を分析するためには、高速フーリエ変換や自己相関係数、偏自己相関係数の計算が有効です。 また、時系列データは複数の要素が複雑に絡み合っているケースがあります。したがって、これらの要素を適切に分離し、分析に必要な特徴を明確に抽出することが重要です。

6.モデリング

データの周期性の分析と特徴の抽出が完了したら、モデリングの作業を行います。時系列モデリングでは、分析の目的やデータの特性に応じて、自己回帰系モデルや状態空間モデル、または機械学習などの時系列解析手法を選ぶことが重要です。 モデリング手法を選定する際には、モデルの解釈可能性、計算の負担、実装の難易度、そして表現力の4つの視点が欠かせません。 適切なモデルを選定し構築した後は、そのモデルを用いてデータを評価し、分析結果を得ます。

時系列データ分析の活用例

時系列データ分析は、さまざまな分野で活用されています。一例として、小売業では販売予測や在庫の最適化に活用され、金融市場では市場分析や取引戦略の策定に用いられています。 製造業の分野では、品質管理の改善にこの分析が役立っています。さらに、電力やその他のエネルギー関連の需給最適化にも応用されています。

販売予測と在庫最適化

時系列データ分析は、小売業などで販売予測と在庫最適化に活用されています。時系列データ分析では、過去の販売データや季節の傾向を基に将来の需要を推測し、在庫を効率的に管理します。 例えば、定期的に購入していた顧客が突然購入頻度を減らした場合、時系列データを分析することで、その顧客がサービスから離れる可能性があることを早期に識別できます。 これにより、需要に合わせた在庫レベルを維持し、在庫にかかるコストを最小限に抑えることができます。

金融市場の分析と取引戦略

金融業界では、時系列データが市場分析や取引戦略の策定に広く用いられています。投資銀行やヘッジファンドなどでは、株価や為替レート、金利といった時系列データを活用し、市場の動きを理解し取引戦略を構築します。 これには、過去の価格変動のパターンや相関関係の分析も含まれ、リスク管理と利益の最大化のために役立てられています。 このように時系列データ分析は、金融市場の複雑な動きを解読し、投資判断の精度を高めるのに欠かせません。

製造業における品質管理

製造業界では、時系列データ分析の活用が品質管理などに広がっています。製造過程で収集されるセンサーデータや機械の運用履歴などの時系列データを分析することで、製品の品質監視や製造プロセスの最適化が行えます。 また、何らかの異常が検出された際には、素早い対応が可能となり、問題の早期解決につながります。 このように時系列データは、製造業における品質の維持と生産効率の向上の両方に大きく貢献しています。

エネルギー需給の最適化

エネルギー業界では、電力やガスなどの供給を管理するために、時系列データ分析が重要な役割を果たしています。 気象情報や消費者の使用パターンなどの時系列データを分析することで、エネルギーの需給を予測し、発電量や供給量の最適化を図ることができます。 時系列データ分析の応用により、電力のピーク需要時でも効率的にエネルギーを供給することが可能です。

まとめ

今回は、時系列データ分析の概要や特徴、時系列データの変動要因、主要な分析モデル、時系列データの分析手順、具体的な活用例などについて解説してきました。

時系列データ分析は、時間が経つにつれて変化するデータのパターンやトレンドを明らかにする分析手法です。

小売業や金融業界、製造業、エネルギー業界など、さまざまな業界で活用されています。時系列データ分析により得られる分析結果は、ビジネスの戦略的な意思決定に不可欠です。

時系列データ分析に興味がある方は、本記事を参考に時系列データ分析を活用してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ
  • 時系列データ分析は、時間経過と共に変化するデータのパターンやトレンドを抽出する分析手法
  • 時系列データの変動要因は、「長期変動」「循環変動」「季節変動」「周期変動」「不規則変動」の5つの種類に分かれる
  • 時系列データの分析モデルは、「ARモデル」「MAモデル」「ARMAモデル」「ARIMAモデル」「SARIMAモデル」の5種類が存在する
  • 時系列データ分析や小売業や金融業界、製造業、エネルギー業界など多種多様な業界で活用されている

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